『ハイジ展』の感想

 アニメのアルプスの少女ハイジも基礎知識以上のことは知らないし、ましてや原作の児童文学とはまるで縁がないので、「少し詳しくなれるかな?」と思って観に行った。

 美術館へと至る歩道に告知ポスターが掲示してあった。それを見ながら「(家庭教師の)CMの元ネタらしいよ」と雑談している若者たちを見かけて苦笑い。

 「ハイジ」は、スイス人の女性作家ヨハンナ・シュピーリによって書かれた小説。展示物は、世界各国で出版された書籍やいろんな作風の挿絵、また日本ではどのように受け入れられてきたかの説明、そしてアニメのアルプスの少女ハイジに関する資料だった。割合としては、アニメの資料が多め。

 原作1作めのタイトル『ハイジの修行時代と遍歴時代』ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』と関係があるらしい。また、ゲーテはアニメ版で家がモデルに使われてもいるそうで、意外な繋がりが感じられた。

 日本には大正時代に入ってきたようで、アニメ化される前から日本に定着していた物語だったのだなと分かった。

 アニメ版に関する展示の入り口には、パイロットフィルム版の資料があった。森やすじさんが描いたキャラ設定の表情がよい。それから、高畑勲監督や宮崎駿さんらが現地に赴いた有名なロケハンの行程表や旅先で撮られた写真、小田部さんのシンプルなスケッチが並んでいた。ハイジはもともとお下げ髪だったのが、小田部さんがキャラクターデザインしたアニメ版では短髪にアレンジされた。

 作画注意事項の展示では、木の椅子の良い描き方(線に丸みがある、木目が控えめ)とダメな描き方(直線的で木目が全面に描かれている)の例が面白かった。それを意識して展示を見てみると、「現代のアニメだったら、これは直線で描かれるだろうなぁ」と想像できるような、あらゆる小道具の線に丸みが感じられた。

 アニメ関係の展示コーナーでは、鉛筆の線をセルに転写する「トレスマシン」の実物を初めて見た! 意外と大きくて存在感があった。

 展示されているセル画の中には、主線が退色しているものもあった。油絵などの美術品が経年劣化した際には専門家が修復したりするが、セル画も将来的には美術品として修復されるような存在になっていくのかなと思った。