『HELLO WORLD』の感想

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 ドワンゴが運営するN予備校の「ものがたり創作」の授業で、物語の主人公には実は「動機」が無くて、誰かに何かを「頼まれたから」が主人公の動機となるのである……と最近学んだのだけど、『HELLO WORLD』の主人公は大人になった自分から依頼を受けていた。
 大人になった主人公の目的は、10年前に起きた死亡事故を未然に防ぎ、恋人の命を救うこと。その過程で、彼が在りし日の恋人の姿を見て、すっと涙を落とす場面があった。「その人がそこに居るだけで嬉しい」という感覚だろう。この場面を観た僕は、昔、ネット上の堀口悠紀子信者がよく使っていたコピペ文、「ほりほりが肺で呼吸をして、お口でご飯をたべる そして元気にかわいい絵を描く それが俺たちの望むほりほりでそれが全て・・・・・・」を思い出していた。ヒロインは魅力的に描かれていて、3DCGでも堀口キャラのかわいさがここまで表現できるんだなと思った。

   映画の主な舞台は、10年前の京都。といっても、劇中の時代設定は近未来なので、今から10年前の2009年という訳ではないのだが、我々の世界で10年前といえば『けいおん!』が放映された年である。なので、『けいおん!』世代の若者が本作を観たら、高校生だった10年前を思い出したりするのかな?と思った。
 僕は10年前に高校生ではなかったけど、いくつか思い出したことがあった。例えば、本作の主人公の部屋に、堀口キャラの表紙のエロい本が隠してあったので、それを観た僕の脳は、記憶領域の最深部から「あずにゃんペロペロ」という言葉をサルベージするなどの働きを見せた。さっきの「ほりほりが肺で呼吸をして~」も相当久しぶりに思い出したが。

 昨今、IT企業や国家による行き過ぎた個人情報の収集が危惧されているけど、このSF映画では、そのようなデータの活用において、人間のリカバリーに使われるような、前向きな未来観が示されているところは興味深いと思った。
 劇中に「リカバリー」という言葉が繰り返し出てきたのだけど、そういう意味では、僕の脳内で薄れていた「ほりほり」領域が本作のヒロインの魅力によってリカバリーされたので、「ほりほり+リカバリー=ほりほリカバリー映画だな……」とか思いながら映画館を後にした。