昔スタジオディーンのサイトにあった西村純二さんのコラム

 人と逮捕しちゃうぞ the MOVIE』の話をしていた時に、「昔、スタジオディーンのサイトに、西村純二監督の制作日記的なコラムがあったんですよ!」「へえ〜知らなかった!」という話になった。「こういうことを若者に伝えるのも、わしら古老の務めか…」と思ったので、インターネットアーカイブのURLの記録を残しておきます。西村純二さんのファンは読むとよいでしょう。

https://web.archive.org/web/20010422173227fw_/http://www.deen.co.jp/taiho/kantoku/noumiso.html

【『監督の脳味噌』リスト】

  • 第1回    開設に寄せて 1998年06月01日
  • 第2回    幻のプロット 1998年06月15日
  • 第3回    墨田区墨東病院 1998年10月05日
  • 第4回    口パクとウクレレ 1998年10月09日
  • 第5回    さて、東京タワー 1998年10月12日
  • 第6回    東京タワーと御詫び・・ 1998年10月17日
  • 第7回    東京タワーの続きから・・ 1998年10月26日
  • 第8回    で、ウクレレですが。 1998年11月02日
  • 第9回    東海林登場前夜 1998年11月16日
  • 第10回    閑話休題 1998年11月27日
  • 第11回    夏の終わり 1998年12月06日
  • 第12回    久々の更新です。 1999年01月19日
  • 第13回    三月末の試写会に向けて冥府魔道を駆け抜ける 制作現場からの実況報告(・・・前夜その1) 1999年02月06日
  • 第14回    三月末の試写会に向けて冥府魔道を駆け抜ける 制作現場からの実況報告(・・・前夜その2) 1999年02月14日
  • 第15回    ホントに修羅場で書込出来ずにすいません【修羅からの脱出 その1】 1999年04月13日
  • 第16回    修羅からの脱出 その2 1999年04月17日
  • 第17回    公開直前、日本ユース決勝進出! 1999年04月22日
  • 第18回    初日の舞台挨拶の事とか 1999年04月25日
  • 第19回    みなさんへの幾つかの回答も込めて 1999年04月25日
  • 第20回    TBSホールでのイベント 2000年06月22日
  • 第21回    レアカードで安比高原 2000年09月04日
  • 第22回 劇場版地上波オンエアのこと 2001年01月01日

『100カメ×アニメ 進撃の巨人』の感想

 NHKのドキュメンタリー番組『100カメ』で、TVアニメ進撃の巨人を制作するMAPPAのスタジオに100台の小型カメラを設置し、スタッフに密着するという回を観た。

 これまでも、ジブリ作品や『シン・エヴァンゲリオンといったオリジナル劇場アニメの制作現場を取材したドキュメンタリー番組は時々観たが、今回はマンガ原作のあるTVアニメ。加えて、番組のノリも重々しいタッチではなく、お笑い芸人のオードリーの二人が愉快なコメントをしたり、映像を観て驚いたりしながら進んでいく、登場人物の名前もカタカナ表記という、カジュアルなタッチだった。

 この種の番組を観ていつも印象に残るのが、アニメづくりの大変さ、機材、監督の粘り強さだ。

 まず、アニメづくりの大変さ。進撃の巨人の現場なので、「見るからに大変そうなスペクタクルシーンのメイキングをやるのかな?」と想像していたが、むしろ、どんなシーンを作るのも楽じゃないんですよという方向性だった。本編の放映前だから、本当の見せ場は温存しておこうという配慮なのかな。とはいえ、目立たない苦労に目を向けることも大事だと思う。何度も消しては描き直すアニメーターたち、3DCGに2500本以上の質感の線を描き足すカネコさん、締め切り間際に遠方のアニメーターに振り回される制作進行の様子が印象に残った。

 次に機材。昔からこの手の番組を観ては、「描いた動きをクイックアクションレコーダーという機械で確かめるのか~」とか驚いていた。今回は、表情やポーズの参考用の自撮りをiPhoneで撮っては描きを繰り返すミッシェルさんの姿が印象に残った。となりのトトロのキャプチャ画像で表情を参考にする様子まで映像に入るのは、正直だなと思った。

 また、スエザワさんがYouTubeでムカデの動きを観察するアプローチも今風だなと感じた。でも、実物のムカデを観て描かれた画なのに、ハヤシ監督がさらに有機的な「それらしさ」を修正で足してきて、画面に魂が宿る過程も見れて面白かった。

 監督が仕事する様子も「伝聞では知っていたけれど、iPadを使う作業風景とはこういう感じなのか~」と興味深く観た。絵コンテを描く場面では「Procreate」が使われていて、原画をチェックする場面では「CLIP STUDIO PAINT」が使われていた。全体的に、現場にデジタルが浸透した時代の空気を感じることができる番組だった。

 最後に、監督の粘り強さ。感情表現に深みを増すようなリテイク指示を出す、監督の鬼気迫る表情が印象に残った。リテイク率8割という。「どう観てもこれは変でしょ…」と感じるようなCG素材まで監督に回っていたので、チェックの機会をなるべく増やして完成度を上げていくワークフローなのかな?とも思った。修正指示に描かれた参考の画が説得力に満ちていて、監督のチェックが進撃の巨人の画面づくりにいかに貢献しているのかが伝わってきた。

 番組全体の組み立ての面では、アニメというと絵描きが注目されるけれども、制作の人たちにもかなりスポットが当たっていたのが記憶に残った。作家性あふれる「オリジナル劇場アニメ」の秘密に迫るドキュメンタリーとはまた違った切り口で、原作のあるTVアニメを集団で作り上げていく制作現場の雰囲気が感じられて面白かった。もっといろんなアニメや、いろんなスタジオに密着したドキュメンタリー番組を観てみたいと思った。

 

(2023年2月23日(木・祝)NHK総合にて、21:30~22:00に放送)

www.nhk.jp

「『夢みる機械』班が選ぶ映画100」を観終わった

 13年も前の話だが、今敏監督のブログで「『夢みる機械』班が選ぶ映画100」という記事を読んだ。

KON'S TONE:「夢みる機械」班が選ぶ映画100・前編
KON'S TONE:「夢みる機械」班が選ぶ映画100・後編

 『夢みる機械とは監督が当時制作中だった作品名で、記事では古今東西の実写映画100本がリストアップされている。その記事が出た少し後に、監督は46歳の若さで、病気で亡くなってしまった。その映画リストは、監督が余命宣告を受けた後に遺したものだった。まさに置き土産だ。

 これを2年ぐらいで全部観終えた人をTwitterで見かけて「凄いなあ、自分もやってみよう」と真似して観始め、それから十年近くかかってしまったが、先日ついに、100本をすべて観終えることができた!

 100本の中には、何度再生しても途中で眠くなってしまうので、数回に分けて無理やり最後まで観たような映画も少数あったが(すみません)、ほとんどは興味を持って観ることができ、心に響くものだった。自分の好き嫌いに任せていたら、一生観なかったかもしれない名作も多かった(音楽がテーマの映画やコメディなど)。いろんな種類の映像表現が楽しめたと同時に、映画を通して様々な国の文化や歴史に触れることもできた。「人生」を描いた映画(『素晴らしき哉、人生!』『長い灰色の線』など)は、特に心にしみるものがあるなと思った。

 ちなみに、観ていちばん衝撃を受けたのはロバート・アルトマン監督の『ショート・カッツ』でした。

 あと、意外な副産物もあった。通常であれば、御本人が亡くなった時点で、新作を観る機会は失われ、もう新たな刺激を得ることはできなくなるはずだった。ところが、リストにある映画を観ているあいだは、故人である今敏監督からまた新たな刺激を受けているように感じられて、不思議な感覚を味わえた。

 

 100本を観終わって、「達成感はあるけど、今敏監督ともこれで本当にお別れだな。ちょっと寂しいな……」と感じた。そう思いながら、久しぶりに監督のブログを見たら、「親切なお節介」というタイトルで追加の映画リストの記事があった。

KON'S TONE:親切なお節介

 当時読んだはずだけど、もうすっかり忘れていた。嬉しい。また十年ぐらいかかるかもだけど、全部観てみようと思った。今は動画配信サービスも充実しているから、もっと早く観終われるかな。

今月のアニメ雑誌の雑感(2022年11月号)

『月刊Newtype

◆書店で「表紙が華やかだな」と思った。Newtypeの表紙にガンダムの顔があるとホッとする。キャラもいて密度感もあって好き。ちなみに表紙と裏表紙が一対の絵になっていた。

◆「井上俊之の作画遊蕩」、ゲストは前回に続き吉田健一さん。主にキャラクターデザインの話題。キャラクターデザインが際立って個性的な場合、昔のアニメでは統一感ある絵作りが難しかったけど、今はワークフロー次第で可能な時代になっている、だからもっと有っていい、みたいな話が印象に残った。視聴者としても、多様な絵柄であってほしい。

チェンソーマン』、瀬下恵介PDインタビュー。枚数制限をしないでリアルにこだわる、という話を読んで期待が高まった。

サイバーパンク:エッジランナーズ今石洋之監督インタビュー。『Cyber​​punk 2077』のゲーム内の街をまるごと探索してロケハンに使えたので、レイアウトや美術の質の向上に活用できたという話が「AAAタイトルが原作だとそういう恩恵もあるのか!」と思った。あと、普段のアニメでは吉成曜さんの格好いいデザインをボツにしてダサく直させているが、今回はゲームファン向けなので格好いいデザインを採用しているらしい。僕はNetflixに未加入なのでまだ観てないけど、普段の今石作品と若干違う雰囲気なのかなと思った。

◆放送予定表で『Do It Yourself!! どぅー・いっと・ゆあせるふ』の2話以降のスタッフを見ると、笹木信作さん、江畑諒真さん、今岡律之さん、松尾祐輔さんといったお名前があり、ワクワクする。4話は「絵コンテ・演出・作画監督=米森雄紀」と書いてあるけど、お一人で全部を!? 今後の楽しみが増した。

アニメージュ』(dマガジン版)

◆監督が『ペルソナ ~トリニティ・ソウル~』松本淳さんだと知って、少し気になっている新作映画『僕が愛したすべての君へ』。監督インタビューでは、フランソワ・トリュフォー突然炎のごとくをお手本にしたと語られていた。どんな映画なんだろう。

◆キャラクター人気投票のページ。今後は、1読者が2キャラに投票できる仕組みに変わるという告知あり。「投票数が減ってきてるのだろうか!?」と思ったが、「では他誌の人気投票はどういう仕組みなんだろう?」と確認してみると、Newtypeは男性キャラと女性キャラを1人ずつ、計2票投票できる仕組み。アニメディアは1読者が2票投票できる仕組みだった。ということは、むしろアニメージュの1人1票制の方が特殊だったのか。

◆編集後記で、アニメの取材現場に現れる一般誌ライターの良くないふるまいに対する怒りが書かれていた。読者には見えないところで、いろんな苦労があるのかな……。

アニメディア』(dマガジン版)

◆「知ってるようで意外と知らない!? アニメのお仕事」のコーナー、今月は『Do It Yourself!! どぅー・いっと・ゆあせるふ』の「DIY監修」のスワロさん。「意外と知らない!?」どころかまったく知らない仕事である。役目としては、高校生の主人公たちが作りたくなるようなかわいい工作をデザインする作業や、登場人物の工具の習熟度と作るものとのバランスを調整するなど、多岐にわたるようだ。確かにそういう目配りをする専門家は必要そうだなぁと納得。スタッフのDIY体験が作中の描写に活かされているという逸話も印象に残った。

『ラブライブ!スーパースター!! Official Visual Collection I』の感想

 『ラブライブ!』関連の本をたまに買っては、期待した内容と違って「not for meだった!」と落胆するのだが、『ラブライブ!スーパースター!! Official Visual Collection I』は自分好みの絵がたくさん堪能できる本で良かった。

 数名のアニメーターが描いた雑誌や書籍の表紙イラスト、Blu-rayやCDのジャケットイラスト、ライブツアーのキービジュアルなどが90点も収録されている。しかも、掲載サイズが大きいので「たくさん載ってるけど、カタログみたいに絵が小さい!」みたいな不満も無かった。

 キャラクターデザイナーの斎藤敦史さんの筆致が好きで、第1期の5人組のLiella!が好きならば、甘美な魅力にあふれているのでおすすめです。