読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

カプコン様式を受け継ぐ『OVERWATCH』のキャラクターデザイン

ゲーム 海外

 『OVERWATCH』リードキャラクターデザイナーのアーノルド・ツァン氏による『VISUAL SOURCE BOOK』のカバーアートを見て、「これは!」と思った。
 大小のキャラクターが左方向に行進する横長の構図や、影無し、セル塗り、白地の配色が『カプコンデザインワークス』(2001年)の装画(画:西村キヌ)を連想させたのだ。

f:id:bono1978:20160725165624j:plain

f:id:bono1978:20160725165635j:plain

 「もしかしてオマージュだろうか!?」と思い、ツァン氏の経歴を調べてみたところ、これは無関係ではないと確信した。

linkedinのプロフィールにはこうある。

UDONエンターテイメントの共同創設者。 ペンシラー 、インカー、カラリスト、カバーアーティストとして、初期のすべてのプロジェクトに従事。『ストリートファイター』コミックシリーズではアルヴィン・リーと共にメインアーティストの一人だった。『カプコン・ファイティング・エボリューション』、『ヴァンパイア:カオスタワー』、『スーパーストリートファイター2ターボ: HDリミックス』のようなタイトルではカプコンジャパンと仕事をした。

  カプコン関係の仕事をいくつも手がけている!

(参考:UDON社についてはこの記事が詳しい→「ウルIV」のコスチュームデザインを手がけるUDONってどんな会社? 熱く支持される理由から海外アニメ事情まで,COMIC-CON会場で話を聞いてみた - 4Gamer.net

  また過去作『APB』のキャラクターデザインに関するインタビューでは、こう答えている。

Citizens On Patrol: Arnold Tsang’s APB | Rock, Paper, Shotgun

Tsang: It’s in my blood, man, I can’t shake it off. It’s probably the greatest influence in my artistic career.

(ツァン:それ(=カプコン様式)は私の血だ。振り払うことはできない。それは恐らく、私のアーティスト人生に最も影響を与えたものだ。)

 現在、全世界で1000万人がプレイしているという『OVERWATCH』に、かつて一世を風靡したカプコンのデザイン感覚が受け継がれている! その意外な血脈を知って唸った。

 

  さて、僕も目下『OVERWATCH』に大ハマリしている。国際色豊かなヒーロー達が、超人的な銃撃戦を繰り広げるプレイ感覚は、ゲーム下手でも下手なりに楽しい。システムはまるで違うものの、中学生時代に熱中した『ストリートファイターII』のような対戦の魅力にあふれていた。

 『OVERWATCH』は、対戦ゲームが時に強いる「修行感」と無縁だ。夢中で遊んでいるうちに、自然に腕前が上達していく。また、対戦ゲーム、とりわけFPSというジャンルからは、カジュアルゲーマーが一瞬で蜂の巣と化す、血も涙もないバトルフィールドを想像してしまうかもしれないけど、『OVERWATCH』はそうじゃない。もっと幅広い人が、対戦の楽しさを味わえるゲームなんだ!

 その、奥深くあっても間口の広い対戦感覚や、世界各国のキャラクターが戦う様子から、なんとなく90年代の古きよき格闘ゲームの楽しさを思い出していたのだけど、僕の直感も一面においては正しかったようだ。

世界に広がるSAKUGAファン

アニメ 海外

 ここ数ヶ月のあいだに、海外のアニメファンが印象的なかたちでアニメの作画(SAKUGA)に言及する場面を立て続けに見かけた。気になったので、記録として書いておく。

 

1)YouTubeにはファンによるアニメレビュー動画が山のように存在する。そこから派生して、アニメーターやアニメ制作会社の解説動画を発表する人が現れた。

 「Animation Spotlights」は、オーストラリアのアニメファンCanipa氏が2015年6月から始めたシリーズ。「作画MAD」(2006年~)や「Sakuga Panel」(2011年~)とはまた違うかたちで、動画によるアニメーター紹介を試みている。

 シリーズ初期の動画には、「フェアユース」、米国著作権法で認められた公正な使用を主張するテロップが挿入されていた。それが正当な主張かは不明だが、作画MAD世代との感覚の違いを感じさせられた。とは言え、フェアユースの下に小さく「PLEASE DON'T SUE(告訴しないで下さい)」と書いてあるので、どこまで本気のテロップかは不明だ。

f:id:bono1978:20160607213758p:plain

 

2)中国の同人誌即売会成都Comiday17」(2016年4月30日~5月1日開催)のパンフレットに、アニメーター榎戸駿氏のインタビューが掲載された。表紙の見出しに「作画MAD世代」とあるのが印象的だった。

f:id:bono1978:20160711154447j:plain

インタビュー記事の日本語版:BLAST - NEKOYA - NEKOPURIN - POWERED BY GENCHOU WORKS

 

3)アメリカの配信サービス運営会社「Crunchyroll」のYouTube番組『Crunchycast』エピソード39(2016年5月20日配信分)。この回のテーマは、「20世紀少年作画MAD甲鉄城のカバネリ」だった(作画MADの話題は、22:48辺りから)。

 男性が作画MADの話題を振ると、女性が「YouTubeのBlueSakugaチャンネルのこと?」みたいな反応をする。このBlueSakuga氏とは、『アニメ偏報号外NEXT』では「作画MAD 海外勢の主砲。大量生産、やっつけ編集、パート間違いの三冠王」と解説されている人物。粗製濫造で悪目立ちする名前が第一に挙がってしまったため、番組を観た日本の真面目な作画MAD制作者達のあいだには、微妙な空気が流れた。

 

4)電子書籍版原画集「E-SAKUGA」シリーズの開発元が、epub形式のフリーマガジン「E-ANIME」を発行(2016年6月24日)。その中の第二特集が「Anime Sakuga」で、制作工程の解説等が載っていた。アメリカやシリア、アラブ首長国連邦のアニメファンが「SAKUGAとの出会い」を語るコーナーも掲載。

 

5)海外にある作画データベースサイト「Sakugabooru」のスタッフと、英語圏のアニメブロガーが共同で、快適なサーバーへの引っ越しのためにパトロンを募る動きを開始(2016年7月2日)。作画やクリエイターの話題に特化したブログも開設し、アラブ世界のアニメファン等から賛同を集めている。

『資料性博覧会09』パンフレット通販開始

アニメ

・5月3日に開催された『資料性博覧会09』のパンフレットの特集記事「求道的アニメファンが注視する、先端クリエイター36人」で、畑博之監督と岩井俊二監督の紹介記事を書きました。また特集そのものも、まんだらけマニア館・國澤さんの依頼で、僕とya_shiさんとで編集しました。

・特集では「ファンが本当に好きなクリエイターを取り上げる」「どこが好きなのかを具体的に紹介する」という点を心がけたつもりです。

 執筆陣は、それぞれ一人でも戦える猛者揃い。このように一堂に会して共通のテーマで書くことはなかなか無いでしょう。また、与えられた枠組みの中で書いた文章なので、ブログで自由に書いた文章とはまた違った面白さが味わえると思います。

まんだらけ通販 | 株式会社まんだらけ 資料性博覧会09公式パンフレット

 

<執筆者(BLOG):紹介したクリエイター>

f:id:bono1978:20160525215533j:plain

『Cyphers』5周年記念アニメの制作会社は「STUDIO PPURI」

アニメ 海外

・韓国製オンラインアクションゲーム『Cyphers』(開発:Neople)の5周年記念アニメの作画が凄いとTwitterで話題になっていた。確かに格好いい。

f:id:bono1978:20160517173540j:plain

 それで、アニメ制作会社が気になったのだけど、社名ロゴが読めないので検索できない! ……と困っていたところ、アメリカのアニメファンが、読みは「puri」で意味は「root」だと教えてくれた。

「root」をGoogle翻訳にかけると「뿌리」と出た。確かにこの字だ!

 その後、本作の参加アニメーターであるInseung Choi氏のFacebookにたどり着いた。そこにアップされたムービーには、社名入りのレイアウト用紙が映っており、これでやっと制作会社は「STUDIO PPURI」だと判明した。

・Facebookによると、Inseung Choi氏はSTUDIO PPURIのCEOでもあるようだ。

・STUDIO PPURIの過去作品、2DRPG『epic7』(開発:SUPER CREATIVE)ティザームービー。

『Wake Up,Girls!』OP大解剖

アニメ

(同人誌『JAGUARNOTE』#1原稿の再録・一部加筆)

戦隊物の遺伝子

f:id:bono1978:20160114201810j:plain

 『Wake Up,Girls!』のOP映像には、東映「スーパー戦隊シリーズ」でおなじみの演出手法が用いられている。

 すなわち、
①メンバーを象徴する動物エンブレム
②メンバーの日常の一幕の紹介
(戦闘能力の高さや、お茶目な一面を示すもの等)
③氏名のテロップ表示と決めポーズ
(時にはスマイルやサムズアップ、背景にエンブレム)
 この①~③が人数分、連続する見せ方である。

 監督の山本寛氏は、過去に戦隊物パロディの自主制作映画『怨念戦隊ルサンチマン』('97)を手がけている。『Wake Up,Girls!』のOP演出がその作風の延長線上にあることは間違いないだろう。
 ただ、本作ではそれを単にパロディとして用いるのではなく、「グループアイドル物」という別ジャンルのメンバー紹介演出に越境させたところに驚きがあった。また、本編の内容にも合致している。

 ひとりひとり出自の異なる少女たちが、芸能事務所にスカウトされ、統一されたデザインのステージ衣装を身にまとい、グループアイドルへとチェンジする。この変貌は、戦隊ヒーローの「変身」と見事に重なりあうものだ。
 もちろん、彼女たちは、直接その手で悪と戦うプリキュアのようなグループではない。だが、『七人の侍』の登場人物になぞらえた苗字を持ち、巨大組織に立ち向かう7人の勇士ではある。

 劇中では、白木プロデューサー率いる国民的アイドル集団「I-1club」が、「人間である前にアイドルである」という非情な理念でアイドルを育成し、全国制覇に突き進む。そこに波紋を生じさせる存在として浮上するのが「Wake Up,Girls!」だ。その対立構図に、幼き日の記憶に刻まれたヒーロー達の勇姿と、困難に立ち向かう「Wake Up,Girls!」メンバーの姿が重なる。
 こうして、僕の血潮をたぎらせるのに、このOP映像は一役買っているのだ。

 (画像は『電子戦隊デンジマン』('80)と『鳥人戦隊ジェットマン』('91))

多色の帯

 OPのファーストカットでは、白地の背景上を踊った虹が、仙台の街を見下ろす青葉城址展望台に舞い降りる。この躍動的な多色の帯は、5色の流星が尾を引く『秘密戦隊ゴレンジャー』('75)のOP を髣髴とさせる。
 また、メンバーとイメージカラーを配置した5分割の画面は、『鳥人戦隊ジェットマン』OP や『電子戦隊デンジマン』ED に見られるレイアウトだ。本作では、今まさに踏み出そうとする脚をクローズアップしたところが格好いい。

f:id:bono1978:20160114210709j:plain
(画像は『秘密戦隊ゴレンジャー』と『鳥人戦隊ジェットマン』)

振り向き動作

f:id:bono1978:20160114204312j:plain

 僕は、島田真夢の「振り向き」の中にも「戦隊らしさ」を見る。
 戦隊物のOP における振り向きは、「メンバーの日常の一幕の紹介」内の一動作として『電子戦隊デンジマン』時代から見られた。
 しかし、80 年代に様式化する。『光戦隊マスクマン』('87)では5人中3人、『超獣戦隊ライブマン』('88)では前期OP、後期OP ともにフルメンバーが振り向きを決め、スタイルとして確立された。翌年の『高速戦隊ターボレンジャー』('89)にもその演出が引き継がれ、強い印象を残した。ヒーローは、振り向くのだ。
 そのため『Wake Up,Girls!』OPでも、島田真夢の振り向きの、その小さな動きの中にも、秘められた大きな力を感じるのである。
(画像は『超獣戦隊ライブマン』)

広告を非表示にする