『リズと青い鳥』感想

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鳥と卵

 才能を「鳥」に例えたストーリーなので、劇中の「卵」の存在が気になった。

 劇中で卵のようなものは、2箇所出てくる。

 1つめの卵は、みぞれのことが大好きな後輩が、希美に「ゆで卵」をプレゼントする場面。「コンビニのゆで卵、味がついてて美味しいです~!」とか言って。一見、なごむ場面だけど、ゆで卵は、要は「一度も飛ぶことなく殻の中で死んだ鳥」じゃないだろうか。この時、みぞれのオーボエは殻を破れずにいるのだが、このままいったら卵のまま死ぬかもしれない。だから、なごんでいる場合じゃなく、結構残酷な小道具だと思う。

 部活内で親睦を深めるのはいいことだけど、今回の映画では、仲良くプールに行っても曲の解釈を深める助けにはならないのである。「みぞ先輩大好き!」と接触してくる、ゆで卵好きの「ぬるま湯」が才能を殺す!(※とはいえ、高校1年生の子が3年生の先輩に与えられるものには限りがあるので、彼女に罪は無いと思う)。

 そして、それとコントラストをなすように、曲の解釈のヒントを与え、生徒を高みへと導く教師の存在感というか、大人が大人の役割を果たしている感が素晴らしいなーと思った。

 2つめの卵(のようなもの)が現れるのは、まさにその指導によって才能が開花する場面。テンションが高まり、「もしかしてわたしたち入れ替わってる!?」みたいな、『君の名は。』をちょっと連想してしまう場面で、あるものがパカっと印象的に割れる。そう、あれが、割れてたでしょ! ……答えを言ってしまうと、画面分割の演出のことなのだけど。僕の心の目は、縦に二分割された画面を「割れた卵」だと感じた。そして殻を破った鳥は、続く力強い演奏シーンで羽ばたいていく。

 なので、「2人の内どっちが青い鳥?」みたいな話ではなくて、卵から鳥が出る話かなと思った。最後の方に、白っぽい鳥が2羽で飛ぶ場面もあったし。

文字

 僕は割と文字に興味があるので、劇中の図書室の棚に「はいぱー色即是空」という本が並んでいたりするのが気になる。あと、進路希望調査用紙の記入欄が狭すぎて、みぞれの名前がはみ出しているので、「記入欄は、記入する人の気持ちを考えて作るべき!」と思ったり。まあ、それはそうと、文字と言えばタイトル。 

 タイトルバックでは、「リズ」の文字がみぞれに、「青い鳥」の文字が希美に重なるようなカメラ位置となる。直前のシーンでは、二人の位置関係が左右逆なので、ある種の印象操作のために意図的に重ねているのだと思う。パンフレットの表紙の絵でも、タイトルとキャラが同様の並びになっている。だから、本作がもし『青い鳥とリズ』というタイトルだったなら、タイトルバックは正面からの構図だったかもしれないし、パンフレットの絵の並びも左右逆だったかもしれない。

 ちなみに、主役2人と絵本の登場人物2人の両方を盛り込んだ版権イラストでは、リズが青い鳥の右側に居る場合もあるが、そういう時は、みぞれも希美の右側に置き、両者を関連付けるルールがあるように見える。

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いちばん好きな場面

 希美のフルートで反射した光が、遠く離れた窓越しにみぞれの身体に当たって、光が身体の表面を撫でると、みぞれが気持ちよさそうな顔をするところ!